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BUTOH KADEN for Japanese


4.8 ( 4238 ratings )
エンターテインメント ブック
開発者 nousite,inc.
9.99 USD

舞踏花伝には88編の「舞踏譜」と、舞踏譜を作品化した「舞踏花伝」を収録しています。

-- 舞踏譜とは? --

「舞踏譜」は舞踏における舞踊譜です。図解を用いず、土方巽口伝の振付が、言葉の集まりとして記されています。詩のようにも見えますが、「舞踏譜」の言葉はあくまでもダンサーに動きや身体のあり方、空間との関わり方を示す「身体言語」です。ひとつひとつの言葉が特定の振りや状態、一連の動きのユニット、踊りのイメージの引用元となる絵画などを指しており、振付家とダンサーの間でイメージや動きを共有する一種の記号となっています。「舞踏譜」は、抽象的・普遍的な法則にもとづく西洋の舞踊譜とも、動きそのものを即物的に描いた日本の舞踊譜とも趣を異にしています。ダンサーが踊る際に必要なものの見方、イメージの持ち方といった記号化しにくい事柄に至るまで、「舞踏譜」では言葉で示されています。言葉は記録の道具というよりも、連想を手がかりに身体的なイメージを拡張していくための、一種の触媒として使われているのです。

「舞踏譜」の言葉は土方巽の稽古場において、個々のダンサーたちに口伝されました。ここでは1972年から1978年までのあいだ、アスベスト館で振付を受けていた和栗由紀夫が、自分のパートの覚書として書き留めた土方の言葉を当時のノートから見てみましょう。稽古場で土方が身ぶりを交えながら発していく言葉や、その時に見せた絵画資料などを、とにかくそのままに速記して書き留め、吸収していこうとする若き和栗の情熱が感じられます。

当時の「舞踏譜」は上演台本であり、創作に忙しかった土方巽は、振付の言葉を自ら体系化することはしませんでした。一方、振付を受けた和栗のノートには、土方の「舞踏譜」の語彙がどんどんたまっていきました。似たもの同士を整理したり、「舞踏譜」相互の関係を考えたり、という回路が和栗の中に生まれてくるのは時間の問題でした。当時、男子部のリーダーとして、後輩に土方の振付を振り写しする立場にあったことも、「舞踏譜」の理解を自分だけにとどめず、共有できる形にまでひもとく契機となりました。記録された膨大な「舞踏譜」の中から88篇を選び、和栗由紀夫なりに7つの世界に分けた分布図が「舞踏譜俯瞰図」としてこのアプリケーションに入っていますが、その萌芽をアスベスト館時代のノートにすでに見ることができます。